遺書や遺言なら誰にでも書ける?あなたが”遺言書”を書くために知っておくべきこと

ひとが死を迎えるに際し、大切な者に自らの思いを託したいと思った場合、託せるツールとして遺書遺言書があります。
遺書と遺言書は響きが似ているので混同されやすいのですが、正確には同じではありません。

しかし、なかにはGさんのように誤解をしておられる方もいます。

Gさん

家族に自分の思いが伝われば、遺書だろうと遺言書だろうとどちらでも良いのでは?

おそらく、Gさんは、遺書遺言書とが響きが似ていることから両者は同じというふうに思われたのでしょう。
しかし、Gさんの考えは危険です。
なぜなら、ご家族やご親族といった限られた関係の中で通用したとしても、遺書の内容が実現するとは限らないからです。

遺書と遺言書は似て非なるものです。

遺書と遺言書のちがいは、法的な効力が生じるか生じないかです。
遺言書は、書かれた内容に法的な効力が生じますが、遺書には生じません。

なぜ遺言書には法的な効力が生じて、遺書には生じないのでしょうか。

遺言書に法的な効力が生じる理由は、
遺言能力のある者によって」、
「法律に決められた形式に則って作成されている」からです。

遺言能力とは、遺言の内容を理解し、その結果を把握できる能力です。
では、16歳の高校生に遺書は書けても遺言書はのこせないのでしょうか?

16歳の高校生でも法律に定められたルールに則って作成されれば、遺言書として有効となる余地があります。
曖昧な答え方ですが、どうしてこういう答え方になるのかを当記事を読んで考えてみていただければ幸いです。

この記事では、間違いやすい遺書、遺言書、遺言について、正しい使い分けをご説明しています。
同時に15歳以上にあると定められている遺言能力にも触れています。

【この記事はこんな方にオススメ】

  • 遺言書作成を検討している
  • 遺言書を書こうと思っているが何から手を付けてよいかわからない
  • 遺言書が無効になることもあると聞いたが、どういうときに無効となるのかが知りたい

あなたが”遺言書”を書くために知っておくこと

遺書と遺言書は響きが似ています。
しかし、遺書と遺言書は似て非なるものであることに注意しましょう。

遺言は、ゆいごん、いごんと読みます。
遺言を日常用語として用いられた場合、遺言はゆいごんと読まれるのが一般的です。
形式や内容に係わらず、故人が死後のためにのこした言葉や文章全般を指します。

一方、遺言に相続といった法律行為がからんでくると、遺言はいごんと読まれます。
遺言(いごん)は故人の最終的な意思表示を指し、法的な効力を生じさせるために法律に定められたルールに則らなければならない、とされています。

法律に定めるルールに則って作成される文書、それが遺言書(いごんしょ)です。
※遺書や遺言書に書かれた文言が遺言(ゆいごん・いごん)です。

まだまだ

遺書にのこされた思いが、遺言(ゆいごん)であり、
遺言書にのこされた思いが、遺言(いごん)と言えます。

遺書と遺言書のちがい

遺書と遺言書のちがいは、法的な効力が生じるか生じないかです。
法的効力とは権利や義務が生じたり、なくなったり、変わったりすることです。

たとえば、遺書に「自分の預金口座にあるお金を”彼女”に譲りたい」旨があったとします。
この遺書のとおりに、そのお金が彼女に譲られるかどうかはわかりません。
故人の相続人が、生前の関係性から好意でいくらかのお金を彼女に譲るかもしれません。
しかし、それは好意からのもので、必ずそうしなければならないものではありません。
なぜかというと、遺書には法的な効力が生じないからです。

「法的効力がある」とは?

では、遺言書に遺書と同じように”彼女”にお金を譲りたい旨をのこしたとします。

その遺言は法的効力が認められることでしょう。
法的効力とは、遺言の内容を実現する力です。
この実現する力が認められるために、その遺言書が有効でなければなりません。
まずは、その遺言書が有効かどうかを見極めなければならないでしょう。

遺言書が有効と認められるには?

遺言書が有効と認められるには、その遺言書が法律の定めるルールに則って作成されていなければなりません。
かつ、誰に遺産をどう分配するかといった情報が明示されていなければなりません。
お金を”彼女”に譲る前例の場合、”彼女”とは誰なのか、いくら譲るのかといった情報が、遺言として遺言書のなかに明示されていなければならないということです。

残念ながら、前例の遺言書は”彼女”がお子さまなのか、内縁の女性なのかが不明です。
このままでは”彼女”にお金が譲られる可能性は低いでしょう。

逆に情報が明示され、法律の定めるルールに則っているなら、遺言書は有効となる可能性が高いでしょう。
つまり、遺言書の内容が実現される可能性が高いということです。

それは、遺言書に法定な効力が生じるからです。

遺言書遺言
意味法的な効力がある書面手紙
作成できる者遺言能力を有する者誰にでも
法的効力の有無あるない

遺書を遺言書と比較してみます。
遺書には法的な効力が生じません。
法的な効力が生じないので、遺書は遺言書のように法律で定められた形式を求められません。

何が書かれていても誰も従う必要がないので、誰もがその内容を無視できます。
遺書に”彼女”にお金を渡したい旨の文言があったとしても、なんの効果も生じないのです。

一般的に遺書には、自死に際して残されるイメージがあります。
実際、遺書には、現世に残した未練や恨みつらみが残されている。そんなイメージがありませんか?

恨みつらみに法的効力はありません。
遺書には法的効力がないことに納得がいくのではないでしょうか。

遺言書作成の際の注意点

遺書と遺言書は、ともにご家族や親しかった者にあなたの思いを伝えますが、遺書をのこす気持ちで遺言書を作成すると失敗するかもしれません。

前述のとおり、遺言書は法律で定められたルールに則って作成されていなければ、無効となります。
それは遺言書には、法的な効力が生じるからです。
法的な効力とは、遺言の内容を実現する力ですが、それは言い換えると、自分の権利を主張し他人の権利を制限するものです。
したがって、遺言書は法律で定められたルールに則って作成される必要があるのです。

遺言書は遺言能力がなければ作成できない?

遺書は誰にでも作成できます。
遺言書も誰にでも作成できますが、その遺言書が遺言書と認められるかどうかは別問題です。

遺言書が有効となるか無効となるかの基準に、
前述した「法律で定められたルールに則っていること」の他にもうひとつ、
遺言能力のある者が作成したこと」があります。

遺言書は誰にでも作成できますが、遺言能力のない者によって作成されたものは無効となります。
遺言能力とは、遺言の内容を理解し、その結果を把握できる能力です。

遺言能力を具体的に述べると、次のようになります。
自分の意思を表示できること
遺言の内容を理解し影響を理解できること
自分の財産をどのように分配するか合理的に判断できること

つまり、遺言書を作成するには(=遺言能力と認められるには)、①~③の能力がなければなりません。
逆に①~③のいずれかが不足すれば、遺言書が作成されたとしても無効になります。

遺言書作成に遺言能力が必要となる理由

遺言書は、相続財産を誰にどう分配するかを示したものです。
相続財産は単なるお金ではありません。
故人が、”誰かのために“と託した思いです。
そんな思いを託すはずの遺言書が誰でも作成できるとなれば、どうなるでしょうか。

遺言の内容がでたらめになり、相続人をいたずらに惑わせ、争わせる原因となるでしょう。
遺言書への信頼がなくなり、誰も遺言書に従おうとはしなくなります。

誰でも作成できるとするのではなく、遺言能力のある者でなければ作成できないとする理由はそこにあります。

では、この遺言能力の有無はどう判断されるのでしょうか。

遺言能力の有無の判断


遺言能力の有無は、次の点から判断されます。

遺言能力の有無を判断する際に考慮されるもの
  • 精神上の障害の在否・内容・程度
  • 年齢(満15歳以上であること)
  • 遺言前後の言動や状況
  • 遺言作成に至る経緯
  • 遺言の内容
  • 相続人または受遺者との人的関係

遺言能力の有無は、これらを総合的に勘案して判断されます。
これらの内、満15歳以上という条件は、外見や学生証などですぐにわかりそうです。
しかし、その他の条件は、遺言の作成者の日頃の言動や発言から判断しなければなりません。

遺言書が有効か無効かの判断基準として、遺言者が認知症であるか否かというものがあります。
しかし、認知症だからといって遺言能力が否定されるわけではありません
遺言の内容が簡明で単純であれば、遺言者の判断能力が衰えていても遺言能力が認められる場合もあります。

遺言書の内容にも制限?「遺言事項」

遺言書はあなたの思いを託すツールですが、遺言の内容全てが実現できるかといえば、必ずしもそうではありません。
それは、あなたに遺言能力があって、遺言書が法律で定められたルールに則って作成されたとしても、です。
つまり、有効な遺言書でも法的な効果が生じない内容もある、ということです。

Rさん

遺言書が有効であれば、遺言の内容は実現できるのではないのか!

Rさんのようにお思いになる方もおられるでしょう。
遺言のなかでも法的な効果が生じるものを「遺言事項」といいます。

遺言事項は、基本的に「自分の財産を誰に譲るか」に制限されています。
葬儀やお墓といった財産以外の内容を遺言としてのこしても、法的な効力をもたせることができません。

葬儀やお墓、死後の手続きについて遺言しても実現されないおそれがあることに注意が必要です。
※実現される場合もあります。
 それは、相続人が故人の思いを汲んで自発的に行われるような場合です。

まとめ

この記事では、遺言書、遺書の違いをまとめました。

遺書や遺言書は誰にでも作成できるものです。
遺書が誰にでも作成できるというのは、遺書がもつイメージからなんとなく想像がつく方もおられるのではないでしょうか。
では、遺言書はどうでしょうか。
遺言書は遺書よりも堅苦しいイメージがあって、難しそうと思ってしまいがちです。

実際に、遺言書には法的な効力が生じるため、遺言書が有効とされるには、
遺言能力がある者によって作成されたこと」、「法律で定められたルールに則っていること」が求められます。

堅苦しい、難しそうというイメージだけで遺言書を避けていては、あなたの思いが伝わらないおそれがあります。
あなたの思いを大切な方に伝えるためには、遺言書としてのこさなければならないときもあるのです。

この記事で、遺言書とはどういったものかを述べました。
遺言書とはどういったものかがおわかりになることで、堅苦しい、難しそうというイメージが少しでも変われば、と思います。

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