「将来、値上がりが期待できる上場株」は、本当に将来も上昇し続けるのかどうかというのは誰にも分かりません。
また同様に、株価が下がるかどうかも誰にも分からないのです。
実際、保有している株式を売却して利益を確定させるか、持ち続けるかは極めて難しい判断です。
上場株とは、証券取引相場に上場している株式です。
※証券取引相場に上場していない株式は、非上場株式です。
だから、Kさんのように保有している株式をどうするかというお悩みは共感できる方も多いのではないでしょうか。

保有している株をどうしよう。
妻や子どもには、こんな売却するか持ち続けるかという厳しい判断は無理だろうな。
株式投資を愉しみにしているKさんは、最近、終活を考え始めています。
保有している上場株は、将来も値上がりの期待ができるものですが、妻や子どもにはリスクもある株式取引ができるかどうか不安です。
いっそ売却してお金に換えたほうが、面倒がなくて良い気がしますが、売却するのも惜しい気がしています。
株式投資を行う投資家の方なら分かるかもしれませんが、
売却した株がその後も値上がりを続けるの指を咥えて見るだけというのは、なんとも悔しいものです。
将来、値上がりが期待できるのであれば、持ち続けるというのもひとつの手なのでしょう。
ただし、保有を継続する場合のリスクや必要な手続きの情報は、ご家族と共有する必要があるかと思います。
あなたが上場株を保有していて、ご子息がおられる場合、その上場株の処分をどうするか、について考えたとき
下図の①~③の3パターンが考えられます。
① 存命中に株式を譲るケース
② 存命中に株式を売却し、得られたお金を相続させるケース
③ 株式を相続させるケース

この記事は、将来値上がりが期待できる上場株を売却したら良いのか、あるいは相続させたらよいのかではなく、①~③のケースについて、どのような手続きが必要とされるのかについてまとめたものです。
- 上場株保有のメリットとリスク
- 上場株売却のメリットとリスク
- 有価証券につきご家族と共有すべき情報
- 上場株の相続時に発生する相続税の算定法
- 上場株の相続時に必要な手続き
上場株を相続させる際には、こんな手続きも

株式投資に限らず、なんらかの投資をしておられる方ならお分かりになられると思われますが、
「相場は水もの」と例えられるとおり、価格の変動が激しく不確実性が高いものです。

この記事は、保有されている株を売却したほうが良い、
保有を継続し相続させたほうが良いというアドバイスをするものではありません。
それでも、ご自身の所有している上場株の値上がりが期待できるのであれば、株式のまま相続させるというのは方法のひとつとなるでしょう。
上場株を大切な方に譲るには?
あなたの保有している上場株を、お子さまに譲るケースを考えてみます。
あなたがお子さまに株式を譲る方法は、下図の①~③のケースのどれかとなります。
① 存命中に株式を譲るケース
② 存命中に株式を売却し、得られたお金を相続させるケース
③ 株式を相続させるケース

①の方法は、あなたの名義となっている株をお子さまの名義に変えた場合です。
この手続きを名義変更といいますが、他の証券会社に株式を移す場合は移管手続きといいます。
贈与とされます。
贈与税の対象となるので、譲った株式の価額が一定額以上になれば贈与税の申告が必要となります。
贈与する方法次第で、贈与税がかからない場合があります。
値上がりが期待できる株を存命中に売却する利点のひとつですので、ぜひ検討して頂ければと存じます。
贈与税の課税方法には、暦年課税と相続時精算課税があります。
暦年課税は、贈与されたものの価額が年間110万円以内であれば贈与税がかからないとする制度です。
わかりやすい制度なので、ご存知の方も多いと存じます。
一方の相続時精算課税は、60歳以上のご両親またはおじい様おばあ様が、18歳以上のお子様やお孫様に贈与する際に有効です。
贈与するものの種類や贈与回数にかかわらず、合計2,500万円まで非課税です。
暦年課税と同様に、贈与されたものの価額が年間110万円であれば、贈与税がかからず申告も不要です。
ただし、ご両親またはおじい様おばあ様が亡くなられると、贈与された額を相続財産に組み戻した上で相続税が算定され、相続時に清算されます。
②、③は相続となります。
相続税の対象となります。
実際に相続税の申告が必要となるかは、相続した財産の価額や相続人の人数によります。
上場株を保有あるいは売却した場合の利点・注意点
それでは、上場株を相続させた場合と売却した場合の利点と注意点を比較してみましょう。
【上場株を保有した場合、売却した場合の利点・注意点】
| 上場株を相続させた場合 | 上場株を売却した場合 | |
| 利点 | ・含み益が拡大する可能性がある | ・即時に売却益が得られる ・贈与税がかからないよう対策できる※1 ・相続税算定が容易 |
| 注意点 | ・相続税評価額が変動する ・相続人名義の口座が必要 ・損失を被るおそれがある ・ご家族と意見が対立するおそれがある | ・相続開始後、株価が上昇すれば、 株式の処理を責められるおそれがある |
上場株保有を継続し相続させる場合の見解からご説明します。
この場合のメリットは、含み益の拡大です。
ただし上場株を相続させた場合の注意点には、次のようなものがあります。
上場株を相続させた場合の注意点
・相続税評価額が変動する
「相続税評価額が変動する」とは、株価は常に変動するため、相続の開始時期によっては評価額が高くなり相続税が負担となってしまうおそれがあるということです。
この相続税評価額の算定法は後述します。
・証券会社に相続人名義の口座が必要
相続人が被相続人の上場株を相続するには、証券会社に相続人名義の口座が必要です。
相続人が証券会社に相続人名義の口座がなければ、新規に口座を開設しなければなりません。
その際には、新規に口座を開設する手続きが必要です。
証券会社に相続人名義の口座があれば、その口座に被相続人の株式を移管させます。
「株式の移管」とは株式をある証券会社から他の証券会社に預け替えをすることです。
この場合でいえば、上場株を被相続人の証券口座から相続人の証券口座に移すことをいいます。
この株式の移管手続きは後述します。
証券口座の口座名義人が亡くなると、「相続サポートデスク」(SBI証券)のように手続き支援を行っている場合が大半です。
上場株を保有している証券会社のウェブサイトを訪問し、確認してみるとよろしいでしょう。
・相続人が株式投資に不慣れの場合、損失を被るおそれがある
いくら故人が良かれと思って株式を相続させたとしても、「相場は水もの」です。
株式取引は常に上手くいくとは限りません。
相続人の株式取引の知識や経験によっては、取引が失敗することがあるでしょう。
信用取引に手を出し始めた、予想以上の利益にそれまでの価値観や生活が崩れた、ということもあるかもしれません。

相続した株式がきっかけで信用取引を始めたり価値観や生活が崩れたりしても、
「上場株式の相続と無関係では?」そう仰る方がおられるかもしれません。
そういったご意見も当然あるものと存じますが、予想外の利益がときに悪影響を及ぼすこともある、ということも検討して頂きたいと思います。
・ご家族と意見が対立するおそれがある
上場株式を相続させるおつもりなら、ご家族と保有株式の処分について共有しておいたほうがよいでしょう。
なぜなら株式は売買取引を行わなければお金に換わらず、タイミングによって損失を被ることもあるからです。
株式取引の危険性をご家族で共有しておいたほうがよろしいと思われます。
取引のリスクは、一般的に想定される価値の下落だけではありません。
上場株式の相続には相続開始後、株式の移管手続きが必要となります。
この手続きは相続人が行うこととなりますので、被相続人は、相続人と証券会社や証券口座、銘柄などの情報を共有しておかなければなりませんね。
この際にも注意が必要です。
なぜなら、あなたの方針と相続人との意見が異なる可能性があるからです。
あなたが相続させたいと考えていても、相続人やその家族が売却したいと考えかもしれません。
あなたがいくら値上がりに期待していても、それで下落するリスクが否定されるわけではありません。
相続人やその家族の選択を間違っていると誰にも言えないのです。
もし、あなたの方針と相続人との意見が異なった場合、どうすればよいのでしょうか。
どうせ相続させるつもりだったからと、相続人の意見に従うのもひとつの手ですが、相続人の理解が得られるよう株式投資のリスクと一緒に将来性を説明してはいかがでしょうか。
理解が得られそうでなければ、エンディングノート等にお気持ちを残してもよろしいかと思います。
ただし、エンディングノートの所在はきちんと共有しておきましょう。
特にユーザーネームやパスワードには書きまちがいがないよう注意して。
上場株の相続時に発生する相続税評価額の算定方法
相続税評価額※3は、基本、相続開始時の株価から算出されます。
そのため相続開始時に株価が暴騰してしまうと、その時だけ極端に相続税評価額が高くなってしまいます。
救済措置として、相続税評価のもととなる株価は、相続開始時、または相続開始の当月及び2か月前までの終値平均値の内、もっとも低い株価を基準に評価しても良いとされています。
相続税評価は、もっとも低い株価を評価額としても良いとされています。
上場株の相続※2を検討されている方は留意しておいたほうがよいでしょう。
※3上場株相続時の相続税評価額
上場株相続時の相続税評価額は、相続開始時、または相続開始の当月及び2か月前までの終値平均値の内、もっとも低い株価を基準に評価されますが、この評価法は上場株の場合です。
非上場株式の場合は、相続税評価額が上場株式のものと異なことに要注意です。
株式の移管手続き
「株式の移管」とは株式を他の証券会社に預け替えをすることです。
この場合でいえば、上場株が被相続人の証券口座から相続人の証券口座に預け替えされることをいいます。
相続人が株式取引をしたことがなく、証券会社の取引口座をもっていない場合、
相続人名義の取引口座を開設する必要があります。
口座を開設する証券会社は、被相続人と同じ証券会社である必要はありません。
相続させる際にご家族と共有しておきたい情報
上場株を相続させたいと思われた場合、ご家族と共有しておきたい情報があります。
上場株を相続すると、相続人は自分の証券口座にそれらを移管する必要があります。
その際に、これらの情報が必要となります。
エンディングノートに記載されていれば、相続人の負担は軽くなるにちがいありません。
年間取引報告書といった報告書を電子交付サービスにより閲覧していれば、書類は郵送されません。
そのため、ご自身が株式取引を行っていることをご家族は知らないかもしれません。
もし、保有株に損失があるなら、きっとご家族には報告しにくいでしょう。
それでも株式取引を行っていることくらいは、ご家族に報告してもよいかもしれません。
まとめ

この記事は、将来値上がりが期待できる上場株を、相続に際し売却すればよいのか相続させたほうがよいのかという判断に資するものではなく、売却と相続の一般的な利点と注意点、必要とされる手続きについてまとめたものです。
株式取引の売買タイミングは非常に難しいものです。
「相場は水もの」といわれるように、株式の価格変動は激しく、将来どうなるかは誰にも予測できません。
そのため、この記事でも相続に際し保有したほうが良いのか、あるいは売却し利益を確定したほうが良いのかについては述べていません。
この記事でまとめているのは、将来値上がりが期待できる上場株でも相続させてしまうと、ご家族に面倒をかけてしまうおそれがある、ということです。
それほど利益にこだわる必要がないのなら、売却を視野に入れたほうがよいかもしれません。
ちなみに、この記事で紹介したご面倒とは、次のようなものでした。
これらの注意点の内、相続税評価額の算定方法や、移管手続きについては記事内でご紹介しました。
将来値上がりの期待できる株を相続させるか売却するか。
この記事があなたの判断の一助になれたらと存じます。


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