認知症とは、様々な病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に変化し、認知機能(記憶、判断力など)が低下して、社会生活に支障を来した状態をいいます。
昨今、日本では高齢化の進展に伴い、認知症と診断される方も増えています。
65歳以上の方を対象にした令和4年度(2022年度)の調査の推計では、
認知症の人の割合は約12.3%、
認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI※1)の方の割合は約15.5%となっています。
つまり、認知機能に関わる症状がある方はおよそ3人に1人ということです。

※1軽度認知障害とは
認知機能の障害が認められるものの日常生活にはあまり支障がないため、認知症とは診断されない状態です。
軽度認知障害の方、全てが認知症になるわけではなく、年間10~15%が認知症に移行するとされます。
認知症が怖いのは、認知症になったご自身の生活が立ち行かなくなることもそうですが、
ご家族だけではなく、友人や近隣の方にご迷惑をおかけする可能性が生じてしまうことです。
この記事では、万が一あなたが認知症になってしまったら、どんなトラブルが生じるのか、どうすれば良いのかについてまとめました。
この記事では、次のことを述べています。
繰り返しになりますが、現在の我が国は認知機能に関わる症状をもつ方がおよそ3人に1人という状況にあります。
つまり、誰にも自分は認知症とは無縁であると言い切れない社会になりつつあるのです。
このような社会の状況下では、「”いま”は元気だから」と自分(だけ)は認知症にならない、という楽観は危険でしょう。
むしろ、頭も体も元気な”いま”のうち内にできることをやっておくべきなのではないでしょうか。
認知症へのおそれを備えることで安心に変える

「認知症は怖い」
大半の方が抱く、認知症に対するイメージは”怖い“ではないでしょうか。
そのイメージはまちがっていないと思います。
認知症は、ご自身の生活を成り立たせなくなる可能性があるばかりか、大切なご家族にご迷惑をかける危険性もあるのですから。
だからこそ、認知症を正確に知り、頭も体も元気な内に備えておかなければなりません。
認知症とは
認知症とは、様々な病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に変化し、認知機能(記憶、判断力など)が低下して、社会生活に支障を来した状態です。
誰しも、お年を召されれば、脳の働きは衰えます。
誰しも衰えに抗うことはできないのです。
だからといって、
ものが覚えられず、すぐに思い出せない。
ご飯を食べたばかりなのにもう忘れている。
同じことを繰り返す。
といった症状がでてきたからといって、すぐに認知症だと結論づけるのは早計です。
認知症ではなく、「認知症とよく似た状態(うつ、せん妄)」や
「認知症の状態を引き起こす病気(甲状腺機能低下症など)」の可能性もあるからです。
認知症か、あるいは認知症に似た状態なのか。
その判断を下すためにも、ご自身に、あるいはご家族に認知症と疑わしい症状があれば、専門医の診断を受けることが吉でしょう。
認知症の初期症状とはどんなもの?
認知症は短い期間で進行が一気に進むものではありません。
初期症状とされる兆候があり、ある程度の期間をもって徐々に進行していくものです。
進行するには期間があるなら大丈夫と安心するのではなく、
適切な診断を受けるため、あるいは認知症になったときの準備期間としてとらえましょう。
公益社団法人認知症の人と家族の会による認知症の早期発見のめやすをご紹介したいと思います。
- もの忘れがひどい
□ 今切ったばかりなのに、電話の相手の名前を忘れる
□ 同じことを何度も言う・問う・する
□ しまい忘れや置き忘れが増え、いつも探し物をしている
□ 財布・通帳・衣類などを盗まれたと人を疑う - 判断・理解力が衰える
□ 料理・片付け・計算・運転などのミスが多くなった
□ 新しいことが覚えられない
□ 話のつじつまが合わない
□ テレビ番組の内容が理解できなくなった - 時間・場所がわからない
□ 約束の日時や場所を間違えるようになった
□ 慣れた道でも迷うことがある - 人柄が変わる
□ 些細なことで怒りっぽくなった
□ 周りへの気づかいがなくなり頑固になった
□ 自分の失敗を人のせいにする
□ 「このごろ様子がおかしい」と周囲から言われた - 不安感が強い
□ ひとりになると怖がったり寂しがったりする
□ 外出時、持ち物を何度も確かめる
□ 「頭が変になった」と本人が訴える - 意欲がなくなる
□ 下着を替えず、身だしなみを構わなくなった
□ 趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなった
□ ふさぎ込んで何をするのも億劫がりいやがる
(出典)[公益社団法人認知症の人と家族の会]家族がつくった「認知症」早期発見のめやす
🔗(PDF資料)家族がつくった「認知症」早期発見のめやす
上記の「認知症では?」という兆しがあれば、早期に然るべき対応をとることをお勧めします。
認知症の兆しがあったら、どうする?
ご自身が、あるいはご家族のどなたかに認知症の症状と思われる兆しがあれば、
おひとりで悩まれることなく専門医や専門家などに相談しましょう。
なぜなら、適切な処置を受けることや適切な対応を知ることで
認知症の進行を遅らせられたり、お世話の負担を減らせたりすることがあるからです。
近年は、アルツハイマー病による軽度認知障害と軽度の認知症の進行を遅らせると期待される抗アミロイドβ抗体薬による治療が行われています。
こういった薬による治療には、その治療法がその方にとって適切かどうかの検査・診断が必要です。
そのためにもまず、かかりつけ医や専門外来を受診しましょう。
認知症に関する主な相談先
認知症の症状と思われる兆しが見られた場合、主な相談先は次のとおりです。
・地域包括支援センター
地域包括支援センターとは、高齢者の健康面や生活全般に関する相談を受け付けている、地域密着型の総合相談窓口です。
あなたがお住まいの地域にある地域包括支援センターについての情報は、
Google等で「地域」と「地域包括支援センター」を併せて検索すれば得られます。
もしくは下記URLからお近くの地域包括支援センターを検索してもよろしいでしょう。
・かかりつけ医
日頃受診しているかかりつけ医に相談することで、適切な専門医療機関へのご紹介をいただけるでしょう。
・医療機関のもの忘れ外来
日頃受診しているかかりつけ医がおられない場合は、医療機関のもの忘れ外来を受診する方法があります。
下記URLからお近くのもの忘れ外来を検索することができます。
・認知症疾患医療センター
認知症疾患医療センターは、認知症疾患に関する鑑別診断や医療相談、ご本人やご家族に対し今後の生活等に関する不安が軽減されるよう診断後支援等を行っています。
電話相談
・認知症に関する電話相談([公益社団法人] 認知症の人と家族の会)
電話番号 0120-294-456
※携帯電話・PHSの場合は050-5358-6578(通話有料)
受付時間 午前10時~午後3時(月~金※祝日除く)
・若年性認知症専用コールセンター(認知症介護研究・研修大府センター)
電話番号 0800-100-2707
受付時間 午前10時~午後3時(月~土 ただし水は午前10時~19時※祝日除く)
※若年性認知症とは、65歳未満で発症したもの
認知症を原因とするトラブル、生活問題
認知症を原因とするトラブル、生活問題の一例をご紹介します。

認知症を原因とするトラブル、生活問題は挙げればキリがありません。
どれも健常者、一般人の方からみれば迷惑極まりない行為にしかとらえられないはず。
周りからは迷惑極まりない行為に見えても、
判断能力の低下した当人にしてみれば、自然で当然の行為。
食事をすませたばかりなのに「食事はまだ?」と尋ねたり
ご家族にお金を盗られたと思い込み泥棒呼ばわりしたりするのは、
脳の働きが衰えた結果であり、認知症の中核症状※1や行動・心理症状※2の顕れなのです。
認知症による被害者とは、
食事を提供したのに「食事をさせてもらえない」と理不尽に怒鳴られる側であり、
お金を盗んでいないのに泥棒呼ばわりされる側なのではないでしょうか。
認知症の方のお世話をするのはご家族が多いのでしょう。
なにをしでかすか分からないので付きっ切りで見ていないといけないこともあるかもしれません。
介護のために仕事をやめざるをえなかったというのはよく聞く話です。
認知症当人は自らの感情で行動する一方で、
彼らの言動に振り回され手間や心労を時に犠牲を強いられるご家族。
認知症故に、お世話をする者の心情や苦労に至ることができないとすれば、
認知症とは、なんと怖く悲しいものなのでしょうか。
※1認知症の中核症状とは
認知症の中核症状とは、認知症の基礎的な症状で脳の働きが低下することで生じる物忘れ(記憶障害)、時間・場所がわからなくなる、理解力・判断力の低下、身の回りのことができなくなるといった症状を指します。
※2行動・心理症状とは
認知症の患者に見られる行動や心理の症状で、ひとりになると不安を感じる、趣味や好きなことに興味を示さなくなる、自分のものを盗まれたと疑う、外出先から帰宅できなくなるといった症状を指します。
認知症と判断されたら、どうする?
ご自身が、あるいはご家族に認知症と見られる症状がみられたら、まず専門医や専門家に相談を。
その次の段階として、ここでは認知症と判断されてしまったらどうなるのかについてご説明したいと思います。
一言に認知症といっても、その程度には軽度のものから重度のものまで幅があります。
ひとりではなにもできない認知症患者もいれば、ある程度のことはひとりでできる認知症患者もいます。
すぐに介護サービスを受けたほうがよい方もおられるでしょうし、
その一方で、それまでとは変わらない生活を送られる方もおられるはずです。
注意すべきは、認知症の方にはできない法律行為(法律で定められた行為)があることです。

なぜ認知症の方にできないのでしょうか?
それは法律行為には、意思能力※3が必要とされるからです。
ゆえに意思能力がない者が行った法律行為は、無効とされます。
たとえば、その法律行為を土地の売買だと仮定します。
あなたは土地を売りたいと思って、大手の不動産会社を訪れたとしましょう。
土地を売ろうと思えばまず、その不動産会社と仲介契約を締結するのが一般的です。
もし対応した営業マンがあなたの判断能力の低いことを疑えば、あなたと仲介契約を締結することを拒否するおそれがあります。
なぜなら、意思能力がない者が行った法律行為は無効となるからです。
意思能力の有無は、行為の結果が判断できる十分な精神能力があるかどうかで判断されます。
したがって契約の内容を理解し、契約の締結によって生じる結果が判断できる程度の判断能力があれば、仲介契約が締結できる余地があります。
つまり、認知症であっても軽度であれば仲介契約は締結できるかもしれません。
しかし、土地の買主が見つかっていざ売買契約を、となったとして、その売買契約が結べるかどうかは疑問です。
なぜなら、仲介契約に比べ、土地の売買契約では多額のお金が動きます。
ここでもし、あなたは土地を持っているつもりでいますが、実は騙されて所有権を奪われた状態だとしたらどうでしょうか?
あなたが認知症だとしても、土地の売買契約自体は有効です。
あなたは所有権を取得し、買主に土地を渡さなければいけません。
軽度とはいえ認知症であるあなたが、騙された相手と交渉し土地を取り戻すことができるでしょうか?
営業マンは仲介契約だけでなく、土地の売買契約まで考慮に入れて契約の締結を拒否するはずです。
このように、ご自身では判断能力は十分だと思っていても、
社会活動や取引を行う際に、その相手側があなたに十分な判断能力がないと評価すれば、法律行為ができないとされても不思議はありません。
判断能力の低下によってできなくなる可能性のある法律行為は、土地の売買契約だけではありません。
それでは、十分な判断能力がない(=判断能力が低下した)者は、法律行為ができないのでしょうか?
法律行為ができなければ、判断能力が低下した者の権利保護に欠けます。
それではいけないということで用いられるのが、成年後見制度なのです。
したがって、契約を結ぶする必要があるのに認知症と判断されたら、
あるいは契約の相手方から認知症と評価され契約が結べないなら、成年後見制度の利用を検討する必要があるということです。
また、前項の【認知症を原因としたトラブル】の内、
「8.布団や健康食品といった必要のない高額な商品を購入する」のトラブルは、就任した後見人等が契約を取り消せる余地があります。
成年後見制度を利用する方法やどういった制度なのかのより詳細な情報はこちらから

認知症と診断されれば、成年後見制度を利用するかどうかの検討は必要です。
ただし、「認知症になっても成年後見制度があるから安心」という認識は危険です。
なぜなら成年後見制度は完全なものではないからです。
成年後見制度の不完全な点は幾つかありますが、
たとえば、前項でご紹介した「認知症を原因としたトラブル例」で、成年後見制度で直接対応できるものは
「6.布団や健康食品といった必要のない高額な商品を購入する」しかありません。
成年後見制度によりふされる後見人等ができる行為は、法律で定められているからです。
つまり、法律で定めれていない1~7以外の行為に対し、
後見人等は認知症患者の危険行為を制止できませんし、強制的に介入することもできません。
このように認知症の方が行う行為全てに後見人等の支援が及ばないというのが、成年後見制度の不完全さのひとつです。
しかし、成年後見制度の不完全さは「他にもある」としたら、あなたはどうお感じになるでしょうか?
🔗成年後見制度リスク
終活でできる認知症対策
「認知症と判断されたら、どうするか?」
成年後見制度を利用するというのは、ひとつの方法です。
成年後見制度は、前項で述べたとおり必ずしも完全な制度とはいえません。
しかし、認知症と判断されれば、社会生活を営むにあたり成年後見制度しか使える制度がないというのが実情です。
ここで、この項を「終活でできる」認知症対策としたのは、成年後見制度をご紹介するためではありません。
終活を行うための時間と、終活を検討できる知見があるなら、なにも不完全な成年後見制度に頼り切必要はないということをご理解いただきたかったからです。
判断能力が低下すると、意思能力がないとみられ、社会で一般的に行われる取引にも制限がかかります。
つまり、判断能力が低下する前、即ち終活できるだけの能力があるなら、
一般的に行われる取引に制限がかかることはありませんから、よりあなたの利益に、よりご家族の利益に即した選択肢を選ぶことができるのです。
成年後見制度以外の選択肢
成年後見制度以外の選択肢には、具体的にどんなものがあるのでしょうか。
繰り返しになりますが、これらの制度の活用や取引には
意思能力が必要であり、判断能力の低下が認められれば採れない選択肢になります。
終活として、これらの選択肢を検討することで、
よりご自身の、よりご家族の利益となるような将来を自ら選択することができるのです。
いかがでしょうか。
この記事をお読みになることで、認知症への怖れが和らぐことを期待します。
また、認知症の怖れを終活で対策を検討することで安心に変わることを感じていただければ、と思います。
まとめ

この記事では、あなたが、あるいはあなたのご家族が認知症になると、ご家族を巻き込んでしまいかねないトラブル例、認知症になったらどうするかといった対策についてまとめました。
認知症は、当人の判断能力低下により自身の行動や思考方法、身体状態が客観的に見られないがゆえに
ご家族や周りの者を巻きこんでしまうことに不幸があると思っています。
そして、そういった認知症のお世話というものは、
お世話する方の精神的なストレスはかなりのものだということだけではなく、
認知症の症状次第では、人生を変えてしまう危険性を孕むものという理解をしておかなければならないということを
お感じになっていただければと思います。
それ故に、仮にご自身が、あるいはご家族のどなたかに認知症の兆しがあれば、
まず専門家や専門医に相談し、適切な処置や対応をとることが望まれます。
専門家や専門医に相談した上で、後見人等の選任が必要だと判断されたなら、
成年後見制度の利用を検討してみましょう。
成年後見制度とは、判断能力が低下した者の生活や財産を保護・支援するための制度です。
しかし、成年後見制度といえども完全とはいえません。
成年後見制度には不完全な点があり、認知症の者の支援や保護を完璧にできるかといえば必ずしもできるとは言えないのです。
もしあなたが終活できる時間や、終活を検討する賢さがあるなら、
あなたや、あなたのご家族により利益となる成年後見制度以外の制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。


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