死は誰にでも訪れるものですから、ご自身の財産のあるなしに関わらず相続は起こります。
「自分には財産がないから」
そうおっしゃる方もいますが、だからといって相続が起こらないわけではないのです。
相続が起こってしまえば、相続人たちはあなたに財産がないことを調べなければなりません。
相続とは、故人から、配偶者やこども、父母といった相続人に、財産上の権利・義務を引き継ぐことです。
相続は故人の“死”を契機に開始されます。
法律に定められた権利主体が消滅する”死“はオオゴトなので、多くの手続きが必要です。
遺されたご家族に課せられる”死“の悲しみ。
そして、慣れない多くの手続きです。
死亡届の提出、生命保険の請求、相続を放棄する手続きや遺産分割協議、相続税の支払い・・・
その間、相続人どうしでの争いが起こったらどうでしょうか?
腹違いの兄弟やら、故人をお世話したから財産をくれと分け前を求める者もでてくるかもしれません。
相続は、想像するよりもずっと大変なものなのです。

相続がこんなに大変なものだなんて
自分が生きている間に、家族の負担を少しでも減らせたら……
相続にかかるご負担を少しでも減らしたいと思いませんか?
相続にかかるご負担を減らす方法はあります。
ご負担を減らす方法とは相続のための準備がしてあることです。
預金通帳や保険、土地の登記簿等がひとつの場所にまとめてあったら、あるいはどんな財産、負債があるか控えてあったらご家族はお手間が省かれたとあなたに感謝するのではないでしょうか。

自分が生きている間に、なにかできることはある?
本記事では、A子さんのお悩みを解決できるよう相続に際し終活としてできることをまとめました。
相続とは切っても切れない関係の遺言についても言及しています。
本記事はこんな方におすすめです。
相続のキソ

相続の流れ
まずおおまかな相続の流れをステップでご紹介します。
被相続人の死亡した日が「相続の開始日」とされます。
7日以内に「死亡届」を役所に提出。「埋火葬許可書」の交付を受ける
公正証書遺言、遺言書保管所、法務局に保管されている遺言書であればステップ⑤へ。
それ以外の遺言書が見つかれば次のステップ④へ
家庭裁判所で開封。
相続人に対し、遺言書の存在、内容を知らせると同時に、遺言書の状態を確認し現状を保全する。
「相続放棄」とは、被相続人の権利義務の承継を相続し拒否する意思表示。
自分のために相続のあったことを知った日から3か月(熟慮期間)以内に家庭裁判所への申述が必要。
未成年や成年被後見人は法定代理人が必要。
「限定承認」とは、相続人が相続分の範囲内で債務を受け継ぐ意思表示。
自分のために相続のあったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所への申述が必要。
全ての相続人が共同で手続きを行わなければならない。
特別縁故者とは被相続人と特別な縁故があった者。財産が分与されることがある。
相続人がいないことが確定してから3か月以内に家庭裁判所に申し立てる。
相続に伴う不動産登記の変更「相続登記」行う。
「遺産分割協議」とは、相続人全員による話し合いで遺産分割を行う方法。
協議がまとまらない場合等は、家庭裁判所に調停を申し立てることができる。
これは相続を大まかに示したものですが、大半のケースで同じ流れを辿ります。
例外のひとつに、遺産分割協議が合意されたあと、被相続人の正式な遺言書が見つかるケースがあります。

遺言書の有無がわからなければ、ご家族はあることを前提に探さなければなりません。
そんなとき遺言書の有無、保管場所の記載がのこっているとどうでしょう。
終活のひとつにエンディングノートの作成があります。
遺言書の有無などを記入しておけば、きっと喜ばれるにちがいありません。
相続の開始日
相続開始日は、被相続人が死亡した日です。
相続に伴う大切な手続きのいくつかに期限が定められており、その期限日を過ぎてしまうと相続人に不利益となるおそれがあります。
不利益をこうむらないために、起算点を「相続があったことを知った日」としている手続きがあります。
| 自分のために「相続があったことを知った日」としている手続き | |
| 期限;3か月以内 | ・相続放棄 … 被相続人の権利義務の承継を拒否 ・限定承認 … 相続した資産の範囲内で債務を負担 |
| 「相続開始と遺留分侵害を知ってから」としている手続き | |
| 期限;1年以内 | ・遺留分侵害額請求権 … 遺留分侵害額を請求 |
| 「相続の開始があったことを知った日」(通常は被相続人死亡日)としている手続き | |
| 翌日から10か月内 | 相続税の申告と納付 |
相続財産
相続財産とは、被相続人が所有していた財産全て(権利や義務といった目に見えないものも)です。
相続する財産には、資産だけでなく借金といった負債、借地権、賃借権といった権利が含まれます。
| 資産例 | 負債例 |
| ・土地、家屋[不動産] ・貴金属類、自動車[動産] ・現金、預貯金、株券[有価証券] ・貸付金[債権] ・被相続人を受取人とする生命保険金 ・借地権、借家権、賃借権 ・著作権[知的財産権] | ・借金、ローン ・連帯保証債務、(金銭)保証債務 ・損害賠償 ・未払いの税金、未払いの医療費等 |
相続財産とならないもの
故人の財産でありながらも、相続財産とならないものもあります。
相続財産とならないものは、被相続人にのみ属する権利です。これらは相続財産から除かれます。
また墓地・仏壇などの祭祀財産は、祖先の祭祀を主宰する者が承継し、相続財産からは除かれます。
【相続財産とならないものの例】
| 被相続人にのみ属する権利 | ・年金受給権、生活保護受給権 ・親権者の地位 ・死亡者退職金(死亡による退職、退職後の死亡によって発生) |
| 祭祀財産 | 家系図、仏壇、お墓など |
相続財産と相続税の関係
相続税は、故人の財産を相続や遺贈によって取得すると、その取得した財産にかかります。
相続財産ではないのに、相続税が課税されるものがあります。
相続人
相続人とは、あなたの死後、あなたの財産を相続した者です。
誰が相続人となるかは法律で定められており、相続人以外の方が遺産を受けとっても相続人ではありません1。
子供のいない核家族の増加、寿命年齢の長期化から、これからよく見られる相続人として次のパターンがあります。

相続分とは、相続人が受け取る相続財産の割合です。
この相続分は遺言で指定することができます。
遺言がなければ、相続分は民法の定めに従います(法定相続)。
このように民法で定められた相続分を法定相続分といい、「被相続人の財産を相続する権利を持つ者」を法定相続人といいます。
法定相続人は、上図の緑で囲まれた者を指します。
相続人は「財産を実際に受け取った者」を指します。
法定相続人と相続人は重なることが多いですが、必ずしもそうとは限りません。
誰が相続人となるかによって法定相続分が異なります。
※法定相続分とは、法律によって定められた相続財産の分配方法です。
法定相続人の法定相続分は、次のようになります。
| 相続人 | 法定相続分 |
| あなたの配偶者 | 全額 |
| あなたの配偶者とお子様 | あなたの配偶者 1/2 お子様 1/2 |
| あなたの配偶者とご両親 | あなたの配偶者 3/4 ご両親 1/4 |
あなたの死後、のこされた者が行う手続き
被相続人の権利・義務の承継
| 相続放棄 | 内容 | 故人の財産を一切相続しないこと 故人の遺産を相続する権利を放棄すること |
| 行使の理由 | 負債が相続した財産より多いとき(マイナスのほうが多い) | |
| 効果 | 故人がのこした借金の返済を免れる | |
| 限定承認 | 内容 | 相続した財産内で、負債を弁済する |
| 行使の理由 | 相続財産がどのくらいか不明 故人の家に継続して住みたい | |
| 効果 | 故人の家に継続して住める | |
| 相続の廃除 | 内容 | 相続人の相続権を奪う |
| 行使の理由 | 故人への虐待や侮辱があった | |
| 効果 | 相続人が財産を相続できなくなる | |
| 遺留分 侵害額 請求権 | 内容 | 故人が財産を遺留分権利者以外に贈与・遺贈したことで遺留分を 侵害された場合に、その侵害額を請求すること |
| 行使の理由 | 遺留分に相当する財産を受け取ることができなかった | |
| 効果 | 侵害分に相当する金銭の支払いを受け取れる |
故人の相続財産を権利、義務を含めて全て相続することを「単純承認」といいます。
単純承認は、上記の相続放棄、限定承認のように手続きは不要です。
※何もしなければ自動的に単純承認となります。
故人がのこしたお金を消費したり、お金を隠蔽したりすれば、相続を承認したものとみなされます。
このほかにも、相続の流れで必要な申請や申立てが発生します。
たとえば、未成年のお子様では遺産分割協議に参加できないため、特別代理人選任の申立てを行わなければなりません。

相続人が大きな負担を背負うか否かは、相続人の決定次第です。
しかし、あなたの終活で負担が和らぐとすると、あなたはどうしますか?
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【相続の経過で発生する申立ての例】
相続の経過で発生する申立ての例としては、下表のようなものがあります。
これらの申立ては家庭裁判所への申立てが必要です。
また申立ての際には、申立書だけではなく申立人や利害関係人の戸籍謄本、証明書類といった多くの添付書類が必要とされます。
| 特別代理人の選任 | 配偶者と未成年の子が相続人となり、遺産分割協議を行うとき等 🔗特別代理人選任の申立て書式記入例(遺産分割協議) |
| 遺言執行者の選任 | (1)遺言によって遺言を執行する人が指定されていないとき (2)遺言執行者がなくなったとき 🔗遺言執行者選任の申立て書式記入例 |
| 相続財産清算人の選任 | 相続人の存在、不存在が明らかでないとき (相続人全員が相続放棄をした結果、相続する者がいなくなった場合) 🔗相続財産清算人選任の申立て書式記入例 |
届出
あなたの死後、あなたが故人となったことを関係各所に届け出なければなりません。
冒頭で述べたとおり、”死”とは法律上定められた権利主体の消滅なので、その消滅に伴う手続きが数多くあります。
注意点は、これらの届け出は提出期限が決まっていることです。
| 届出 | 提出期限 | 提出先 |
| 死亡届 | 死亡の事実を知った日から7日以内 罰則あり | (1)故人の死亡地 (2)故人の本籍地 (3)届出人の所在地 (1)(2)(3)いずれかの市町村役場 |
| 年金受給停止 | 10日以内(厚生年金) 14日以内(国民年金)罰則あり | 年金事務所、年金相談センター |
| 健康保険の資格喪失届 | 死亡後5日以内 (健康保険) | 年金事務所 ※会社が行ってくれるケースが大半 |
| 死亡後14日以内 (国民健康保険、 後期高齢者医療制度) | 市区町村役場 | |
| 介護保険資格喪失届 | 死亡後14日以内 | 市区町村役場 |
| 住民票の世帯主変更届 | 死亡後14日以内 罰則あり | 市区町村役場 |
| 雇用保険受給資格者証返還 | 死亡後1か月以内 | 雇用保険を受給していたハローワーク |
| 国民年金の死亡一時金請求 | 死亡後2年以内 | 市区町村役場、年金事務所、年金センター |
| 埋葬料請求 | 死亡後2年以内 | 加入している健康保険組合または協会けんぽ |
| 葬祭費 | 死亡後2年以内 | 故人の住んでいた市区町 |
| 高額医療費の還付申請 | 死亡後2年以内 | 年金事務所 |
| 遺族年金の請求 | 死亡後5年以内 | 年金事務所 |
| 個人の未支給年金の請求 | 死亡後5年以内 | 年金事務所 |
上表にある届出が全てではありません。
たとえば、預貯金の名義変更や、株式の名義変更といった手続きや、故人を受取人とする生命保険金の請求などの手続きがあります。
上表にはふくまれていませんが、これらの申請には届出書、申請書だけでなく、添付書類が要求されるものがあります。
添付書類の収集、作成も手間と時間がかかるものです。
届出や返還がなされなければ、罰金が課せられるものがあることに要注意です。
たとえば、死亡届は死亡の事実を知った日から7日以内に提出しなければなりません。
※戸籍法137条により5万円以下の罰金
登記にまつわる手続き
相続によって、土地や家が相続人に承継されれば、相続登記が必要になります。
相続登記は相続人が行うことができますが、司法書士にお任せする場合が多いです。
税金にまつわる手続き
| 準確定申告 | 故人が自営業主だった場合 |
| 相続税の申告・納付 | 相続財産等の合計額が遺産に係る基礎控除額を超える場合 |

相続に伴う手続きは、非常に多く、その上期日のあるものがほとんどです。
ただでさえ大変な手続きをスムーズに最小の労力で終わらせてあげたいと思いませんか?
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相続をスムーズに成功させるためにあなたのできること
冒頭で述べたように相続というのは大変な手続きです。
とはいえ、相続をスムーズに成功させるためのポイントがないわけではありません。
これらのポイントについてリンクをご参照ください。
あなたの死後、ご相続人全員があなたの財産をどう分けるかを話し合うことです。
あなたの遺言書がのこされていない場合や、残されていても内容に問題がある場合に行われます。
遺産分割調停を申し立てることができます。
遺産分割調停では、裁判官と民間から選出された調停委員が、相続人間の利益・不利益を調整し調停成立を目指します。
調停が成立することで作成される調停調書は強制力をもつので、相続財産の分配が実現できます。
そのような場合でも、遺留分という法律上取得を保障されている一定の割合については、遺留分を請求することができます。
自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内であれば,相続放棄の申述(申立て)をすることができます。相続放棄の申述が受理されると,申述人は最初から相続人ではなかったことになりますので,被相続人の債務を相続により負担することはなくなります。
相続人不存在の財産は、最終的に国のものになります。しかし、被相続人と特別の縁故がある者については、申立てにより、その者に財産を分与することが認められることがあります。
まとめ

この記事では、大まかな相続に伴う手続きをご案内しました。
記事をご覧いただけるとお分かりになると思いますが、相続というものはご家族にご負担をかけるものです。
そのような負担をご家族にはおかけしたくない。
そうお思いになるのは至極当然のことと存じます。
では、もし自分が元気な間に、正しい終活を行うことでご家族へのご負担を減らせるとなればどうでしょうか?
ご家族へのご負担を減らしたいと願われるのであれば、ぜひ終活を前向きに考えてみてはいかがでしょう。
- 法定相続人以外の者で、遺言等により財産を受領した者は「受遺者」です。
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